2016年より運営委員を務めさせていただいています月桂冠株式会社の小高です。超大作ブログ執筆のため時間がかかったというわけでもないのに、更新が遅くなり大変申し訳ございません(>_<) お気楽にお読みいただけたらうれしいです。
いきなりですが、大学の頃の話から始めます。大学・大学院では微生物を使ったモノづくりの研究に携わっていました。大学では研究にものすごく没頭していたわけではありませんでした(ダメですね…)。しかし、いつしか微生物を使った産業に貢献できる研究をしたいと思うようになりました。そして縁があって2003年4月に月桂冠株式会社に入社し、総合研究所に配属されました。
私が携わった証がありました!
http://www.hakko.kais.kyoto-u.ac.jp/publication/2004.html
おいしいお酒を造るための研究をするんだと心躍らせていましたが、与えられたテーマはなんと飲まないエタノール、バイオ燃料(バイオエタノール)の研究でした。事前にそんな情報をキャッチしていたわけでもなかったので、ちょっとビックリしました。具体的には、麹菌の酵素を清酒酵母の細胞表層に提示させ、バイオマスから直接エタノールを作るというものでした。麹菌のゲノム情報が使えるようになると、あれもこれもといろいろな遺伝子を発現させました。結構うまく酵母細胞表層で活性を確認できたので、麹菌と酵母の相性のよさを感じました。麹菌と酵母の相性のよさは清酒醸造環境中だけじゃないんです!?
バイオエタノールの研究(古い!)
https://www.gekkeikan.co.jp/RD/bio/bio01/
2009年から清酒醸造に関する研究に取り組むことになりました。よい研究成果は、醸造現場での実用化や商品開発などに直結することもあるので、とてもやりがいがあります。お酒造りのあらゆる工程が研究対象であり、米、微生物(麹菌、酵母)、発酵管理、貯蔵などとても幅広いです。また、工場内に研究所があるので、現場の方々とお話したりお酒を飲んだりする機会も多いです。営業の方々と商品開発に関するお話もよくします。全部やろうと思ったら大忙しですが、優先順位を付けてしっかり取り組みます。また、組織としてやるべきことに加え、個人としてやりたいことのバランスをうまく取ることによって、研究シーズの実用化と研究シーズの創出の両方を常に行えるようにしています。
自動製麹機の前です(ちょっとモザイクかけてます)
研究の対象が広いということもあり、糸状菌(麹菌)を扱う研究の割合はもともとそんなに高くありません。そんなあるとき、学会でよく聞く文言がとても気になるようになりました。
「清酒、焼酎、醤油、味噌など日本の伝統的発酵産業で用いられている麹菌は…」
このようなフレーズをよく聞く割に、アカデミアの方々が見出した知見が産業界で活かしきれていない気がしたのです。産の人間である私は、まずは学官とのつながりをもっと強くしたいと思うようになりました。そこで、2015年の糸状菌遺伝子研究会の懇親会で、当時の糸若会運営委員に私もメンバー入りしたいと志願し、2016年にめでたく運営委員入りできました。また、麹菌研究を実際の酒造りに活かせるかどうかの検討も今まで以上にやるようになりました。
こんな発表をしています
https://www.gekkeikan.co.jp/RD/outline/presentation/
一方、糸若会にもっと産の方々にも参加していただきたいと思っていました(私がメンバー入りしたときは産の人間は私だけでした)。これについては、現メンバーが多方面にお声がけしてくださったおかげで、糸若会の産学官のバランスは随分よい感じになってきました。今後もこのようなバランスを保つことで、糸若会はきっと盛り上がり続けるものと信じております。
糸若会を盛り上げているのは、何と言っても若い会員のみなさま、特に学生の方々です。引き続きおもしろい研究成果の発表を期待していますね。ちょっとだけ偉そうなことを言うと、ご自身のやりたいことを意識することと、ご自身の強みを認識することを心がけてください。やりたいことを必ずしもできるとは限らないこのご時世ですが、そういったときでもやりたいことを内に秘めておくことは大切です。強みの認識とかポジティブ心理学はちょっとしたマイブーム(?)です。「VIA-IS」というのを検索してみてください。参考になればうれしいです。まあ、でも学生の間は研究だけでなく、自分のやりたいことをしっかりやって悔いのない学生生活にしてくださいね。本当はワークショップで遅くまでお酒を飲みながらお話をしたいところですが、こういう状況下なのでなかなか叶わないですが…。
弊社研究所の前です(曇天ですね)
長くなってきたので、そろそろオチを…。
弊社の研究所は111年の歴史があります(研究所の設立は1909年、会社の創立は1637年!)。「健をめざし、酒(しゅ)を科学して、快を創る」というコーポレートブランドコンセプトに表されているように、弊社は研究を大切にしている会社だと思います。そのおかげもあって、自由な発想で研究に取り組めています。企業研究者としてはとても幸せなことですね。周囲の方々に感謝の気持ちを忘れず、わくわく感をもって研究し、お客様のうるおいにつながるような商品開発につなげたいと日々思っております。
弊社研究所の歴史です
https://www.gekkeikan.co.jp/RD/outline/
これからもよろしくお願いいたします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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